インフルエンザ点鼻ワクチン「フルミスト」について
今年の10月よりインフルエンザの点鼻タイプの弱毒化生ワクチン「フルミスト」が第一三共株式会社より発売されます。
フルミストは、鼻にスプレーするタイプのインフルエンザワクチンです。
弱毒化され病気を起こす力はほとんどなく、25℃の低温で増殖するものの比 較的高温の下気道(気管支・肺)では増殖できないため、インフルエンザのような強い症状は引き起こさないようになっています。
インフルエンザウイルスの一般的な侵入口である鼻の粘膜に免疫を誘導することにより高い感染防御効果が期待でき、同時に血液内にも免疫を成立させるこちにより感染してしまった場合でも重症化を抑制すると言われています。また効果の持続も皮下注射によるワクチンより長く、皮下注射の効果が約5か月間持続するのに対し、フルミストでは約1年効果が持続するとされています。
欧米では早くから実用化(アメリカ2003年~、ヨーロッパ2011年~)され、注射の不活化インフルエンザワクチンと同様に、インフルエンザウイルスに対する予防接種として広く使用されており、安全性・有効性ともに確立されたワクチンです。
感染防御効果
皮下注射によるインフルエンザワクチンは、血液中にインフルエンザウイルスに対する免疫を誘導するために、重症化抑制効果は期待できるものの、感染自体を防御する効果は十分でない場合があります。
一方でフルミストは粘膜の表面に直接免疫を成立させ、気道分泌型IgA抗体を誘導することにより、従来の皮下注射のワクチンに比べて予防効果が高い(特にこどもにおいて)と言われています。
また、皮下注射のワクチンはワクチン株が流行しているインフルエンザワクチンと株が異なる場合は効果を発揮できませんが、フルミストは生きたウイルスで免疫を作るため、流行しているインフルエンザと株が違っても発症を軽症化させる作用があります。
CDCガイドラインでは接種後2週間でワクチンの効果が得られるとされています。
接種対象、回数
今回承認された接種対象は、2歳から18歳までの方です。
接種回数は年齢にかかわらず、毎年1回でよいとされています。
※海外では8歳未満・未接種かつ未罹患の方は2回接種となっておりましたが、本邦では臨床研究の結果から1回接種でも十分免疫がつくとのことで、1回接種でよいということになっています。
※皮下注射の場合、12歳以下では2回接種が必要です。
※経鼻生ワクチンでは他のワクチンとの間に接種間隔を空ける必要はありませんので、他のワクチンの接種歴・接種予定にかかわらず接種いただけます。
喘息患者の方への接種について
米国では、喘息または喘鳴の既往歴のある 2~4 歳児への接種を推奨していない一方で、本邦の添付文書上では重度の喘息を有する者又は喘鳴の症状を呈する者における接種には注意が必要とされています。
当院では今年度は過去一年以内に強い喘息発作を起こしておられない方に関しては接種可能といたします。一年以内に強い喘息発作を起こしておられる方には従来通りの不活化ワクチンの接種をお勧めいたします。ご注意ください。
ワクチン接種ができない人
- 2歳未満、19歳以上の方
- 卵白やその他のワクチン成分に対して重度のアレルギーやアナフィラキシーの既往がある方
- アスピリン服用中の方
- 免疫を低下させる疾患やステロイド・免疫抑制剤の内服により免疫が著しく低下している方、または免疫力が著しく低下している人と同居している方
- 明らかな熱(37.5度以上)がある方
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな方
- 妊娠していることが明らかな方
- 重度の喘息を持っている方