小児科 子どものアトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎について
アトピー性皮膚炎は、かゆみをともなう湿疹がよくなったり悪くなったりを慢性的に繰り返す状態です。1歳までは2ヶ月以上、1歳以上は半年以上こうした状態が続くと慢性と判断されます。
アレルギーを起こしやすい体質や皮膚バリア機能が弱いと発症しやすく、アトピー性皮膚炎の湿疹には下記のような特徴があります。
- かゆみをともなう
- 赤みがある
- ジュクジュクしている
- 掻くと液体が出てくる
- 皮がむけてくる
- 症状が長期化すると皮膚が硬くなり、分厚くなる
- 顔や身体に左右対称に湿疹ができやすい
- おでこ、目・口・耳の周囲、首、わきの下、手足関節の内側にできやすい
アレルギーの発症には体質も大きく関与しているため、本人が過去に食物アレルギーなどを起こしたことがある場合には発症しやすいと考えられます。また、血縁者にアトピー性皮膚炎・気管支喘息・アレルギー性鼻炎・食物アレルギーがある場合も発症リスクが高いと言えます。
アトピー性皮膚炎の原因と悪化させる要因
アトピー性皮膚炎の湿疹は、皮膚のバリア機能が低下して外部刺激が皮膚内まで入り込み、免疫の過剰反応が起こって発症していると考えられています。
悪化させる原因には、皮膚への物理的刺激、ダニやハウスダスト、カビ、化学物質、紫外線、汗などの刺激があります。また、過度な疲労や睡眠不足をはじめ、身体的・心理的ストレスも免疫を不安定にするため悪化につながります。
アトピー性皮膚炎の治療方法
治療では、外用薬・内服薬・注射剤・保湿剤の4種類が使われます。湿疹や皮膚の状態により、軽微・軽症・中等症・重症と4段階に分け、それぞれに適した治療を行います。状態が変化したらその段階に合わせた治療に変更して続けます。改善したら保湿剤で皮膚バリア機能を良好に保って再発を予防します。
外用薬
過剰な免疫反応を抑えるための塗り薬です。医師の指示を守って正しく使うことが重要です。
ステロイド外用薬
過剰な免疫反応を抑える働きがあります。
現在は、プロアクティブ療法＝症状が一時落ち着いた後のステロイドを少しずつ使う治療法など、新しい形のステロイド治療もあります。
免疫抑制外用薬
ステロイドの長期使用による副作用が懸念される場合や、ステロイドで十分な効果を得た後の治療として、使う場合があります。
内服薬
抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
掻いてしまうと皮膚のバリア機能が壊れて湿疹が悪化するため、かゆみを軽減して、できるだけ掻かないようにすることで症状の悪化を防ぎます。
ステロイド内服薬
重症化して外用薬では改善できない場合に使われます。免疫反応を強力に抑える効果が期待できるため短期間で状態の改善が期待できます。医師の指示を守って服用してください。
免疫抑制薬
16歳以上に処方が可能な薬剤です。強い炎症がある場合に処方されます。服用中は血圧の上昇、腎臓機能の低下などを起こす可能性があり、服用期間は最長3ヶ月までとなっていて、その期間が終わったら休薬する必要があるなど、注意が必要な薬剤です。この治療をご希望の場合には、連携高度医療機関をご紹介しています。
注射薬
上記の治療で十分な効果を得られず、全身の広範囲に強い炎症を起こしている場合に検討される治療法です。炎症を引き起こすインターロイキンの過剰な働きを抑制します。成人しか受けることができませんし、ステロイド外用薬や免疫抑制外用薬を同時に使用しながら治療する必要があります。この治療をご希望の場合には、連携高度医療機関をご紹介しています。
保湿剤
皮膚のバリア機能は乾燥すると低下してしまうため、適度な湿度を保つことが重要になります。ヘパリン類似物質など強力な保湿機能があるクリーム・ローション、軟膏などがありますので、使いやすいものを処方してもらってください。症状改善だけでなく、再発防止にもこまめな保湿はとても重要です。
スキンケア
汗など刺激物質をこまめに拭き取り、肌着のお着替え頻度を増やすなど、清潔を保ち、徹底した保湿が症状改善に重要です。
洗う際には余計な刺激を避けるため、よく泡立てた石鹸で優しく洗って、きれいにすすいでください。化学物質や香料をできるだけ含まない低刺激の石鹸を使うと安心できます。また、バスタブやシャワーの温度が高いと刺激が強くなってしまうため、ぬるめの温度を心がけましょう。入浴後、タオルで拭く際もこすらないで水気を吸い取るように優しく拭き、できるだけ早く保湿しましょう。
原因の除去
刺激をできるだけ減らすことで、悪化の予防につなげることができます。部屋をこまめに掃除してハウスダストを減らす、肌に直接触れるものは刺激を起こしにくい素材を選ぶ、洗濯では化学物質ができるだけ含まれない洗剤を使って十分にすすぐなどを心がけてください。なお、ウールは自然素材ですが、ほとんどのものはチクチクと強い刺激を起こすためご注意ください。
上手な薬の塗り方
適量を指にとったら優しく塗り広げ、保湿剤も併用して乾燥を防いでください。皮膚は、場所によって塗った薬剤の吸収率が異なります。医師の指示を守って適量を正しく塗りましょう。特に、手のひらや足の裏は吸収しにくい場所ですから、皮膚が柔らかくなっている入浴後すぐに塗るようおすすめしています。わからないことがあれば些細なことでも遠慮なく質問し、しっかり理解することが重要です。
